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大家さんのひとりごと


ヒントになれば
2006年4月19日

「「適切」という考え方(1)」


「平川さん。苦しくない? 車イス用意しましょうか?」
「え? なんで? 別にしんどくないですよ。
だって自分でクルマを運転して来たくらいやし。」
病院内で看護婦さんと実際に交わした会話の一部です。

病院到着直後に熱を計ったら40度に達しようかという
有り様です。それに、何だか息苦しいし。

このときはまだ「やっぱり、インフルエンザかな?」と
思っていて、よもや肺炎なんぞになっているなんて
考えもしていませんでした。
そうはいうものの、病院へ向かおうと
クルマに乗った瞬間から確かに息苦しかったのです。
ただそれは、自宅から少し離れたところにある駐車場へ
早足で歩いたせいだと思っていました。
なぜなら、そのようなことは健康なときから
よくあったからです。その程度の息苦しい感覚でした。

果たして20分後・・・。
「平川さん。抗生剤を点滴で投与するから、処置室で
横になってくれる?」
この季節ならある意味で「お約束の」
インフルエンザ・ウイルスの検出検査を受けた結果は陰性、
つまり検出されなかったのです。

「それがね、もうちょっと調べてみんと
分からんみたいやねんわ。この点滴が終わるくらいまで
時間がかかるかな。あ、それと、点滴が終わったら、
レントゲン撮影ね。」

この病院とはもう古いつきあいです。
祖母とオフクロ様が随分とお世話になりました。
当時、生前の祖母の主治医だったH先生も、
生前のオフクロ様の主治医だった乳ガン学会の権威である
O先生も、ますますお元気そうでした。
院内の看護婦さんもその半数以上が顔なじみなので、
何だか病院に来ている感じがしません。
それこそ、「あ、平川さん、いらっしゃい。」みたいな
感じです。もっとも、病院から「いらっしゃい」と
言われるのには、ちょっと辛いものがありますけれど(笑)。
ただ、祖母の頃からなので、かれこれ20年近くの
「なじみ」なのです。そういう意味では、何かあっても
すぐに診てもらえるので心強いものはありますが、
医者と弁護士と警察とのご縁は、やっぱり遠慮したいものですね。

レントゲン撮影を終えて処置室に帰ってくると、
点滴がもう一種類用意されていました。
「ゴメンね。もうひとつ打たなアカンねんわ。
痛い目させてゴメンやで。」
  ここで初めて自分の容態がただならぬことになっているのでは
ないかという、病院に来る前とは全く異なる不安が
募り始めました。

「どのくらい時間かかります?」
「う〜ん、1時間くらいかな。座りはる? 横になりはる?」
横になる方が楽だったので、そちらの方を選びました。

「それ、何の点滴?」
「あ、これ? これも抗生剤。さっきのとは違うけれど。」
「ナンか、えらい厳重なんやね。」
「先生の指示やからね。」

この1時間が長かったのです。
ベッドに身を横たえている私を時折見に来ては、
何も言わずに去っていく主治医と思われる医者と、
なかなか結果を言いに来てくれない看護婦さんとに
不審感が募りはじめました。

肺ガンじゃないだろうな・・・。

オフクロ様は乳ガンだったとはいえ
最後には肺に転移して亡くなったし、
肺ガンに罹患する前に肺炎も患ったことがあって、
そのときの記憶が私の脳裏によみがえって来たのです。

「50歳にしてベンツ」って言ってたのになぁ。
肺ガンだったら、短くてあと1年、長くても3年か・・・。
あ、「ベンツ」は無理だワ。
あ〜あ、もう少し長生きしたかったよなぁ・・・。
ボクがベンツに乗るまでは迎えに来ないでよ。
いくらナンでも早すぎるよ。
「アンタがベンツに乗るまで死ねない」なんて言いながら、
それでもオフクロ様は63歳で逝ってしまったし・・・。
だからって、45歳の息子を迎えに来なくってもいいじゃないのよ。

複雑な想いが脳裏を去来します。
1時間後、診断が出ました。

ナンと、マイコプラズマだったのです。

(今年こそインフルエンザには罹るまいぞ。
さぁ、インフルエンザよ、どこからでもかかってきなさい!)

まるで城を護る門番のごとく、仁王立ちになって
インフルエンザの襲撃に備えていたら、あらら、ナンノコッチャ。
思いもせぬ病魔が忍び寄り、じわりじわりと、
この身を侵していたなんて。

新年早々から体が冷え込んできて、
それとともに気力まで奪われそうになりながら、
それでもどうにかこうにか事なきを得ていたのです。

医者の説明では潜伏期間は1か月か2か月で、
何か心当たりはないかと尋ねられること数回。

思い起こせば、異常なほどの冷える感覚や肩こり、
それに延々と続いていた右奥歯の歯茎の腫れ・・・。
これらはみんな、このマイコプラズマと戦っている
わが身からの警告だったのです。そうとも知らずに、
随分とわが身を痛めつけていましたね。

ああ、もう若くはないんだ。
45歳か。ヤキがまわったよなぁ。

自分ではまだまだ20歳のつもりなんですがね。
・・・て、この「つもり」そのものが
年を取った証拠なんでしょうね。

(続く)


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